システム手帳 フラクト ミニ ベルト付き φ20mm

ノックスデザインの核心は「素材」。素材の魅力が最高に発現するように、機能、色、形などのデザインが緻密に構築されています。フラクトのカバー素材である牛革（ステア）「アラスカ」は、柔らかい表情のシボが特徴。北米アラスカの雪原を思わせるような白いワックスが表面に吹き付けられており、使い始めると最初にシボの凸部のワックスが取れ、美しい濃淡が現れてきます。さらに使い込んでいくとワックスが全体に擦り込まれ、独特の艶が内側からにじみ出てくるのです。

フラクトは上質な革素材を厳選し、裁断、念引き、コバ磨き、縫製など、すべての工程をひとりの熟練した職人が作り込んでいます。特に際立つのがステッチの美。例えば、カバーの上下端には2列のステッチが並んでいるのですが、よく見ると上下のステッチの景色が違っています。ステッチの間隔、角度に絶妙な揺らぎがあります。これらの縫製は電動ではない旧来の足踏みミシンを使っており、自分のペースでひと針ずつステッチを加えていくことで、極上の革素材が持つソフトな印象をステッチが引き出し、ハンドメイド独特のぬくもり感をユーザーに与えてくれるのです。

ハンドメイドを追求する職人魂が強烈に宿っているパーツもあります。表カバーの上下の端と、革パーツを2枚重ねしている剣先ベルト中央の大きなステッチは、なんとハンドステッチ（手縫い）。フラクトの佇まいに堅牢さと大胆な印象を加えている象徴的な細部といえるでしょう。

ハンドメイドが生むぬくもりは、フラクトのパーツの緩やかなラインにも潜んでいます。各パーツの裁断は革専用の包丁を使って職人が手作業で行っています。剣先ベルトやペンホルダーの開口部などのエッジが利いた緩い曲線は、ベルトやペンの抜き挿しを円滑にする機能美であり、同時にフラクト独特のやわらかな佇まいを生み出しています。

フラクトのジッパーポケットの構造も独特。まず大型のサイフを作ってそれをカバーに合体させる凝った作りをしています。カバー端の処理は「へり返し」で、革素材の端（へり）の裏同士を合わせて縫製。これは革小物の伝統や古風さを感じさせる端処理（コバ）。一方、ここに合体しているジッパーポケット部の端は「切り目」と呼ばれるコバ。革を切断し、切断面にはニスなどを加えて磨き上げています。へり返しの丸みを帯びた部分は、タンニン鞣しの革独特のエージングが進み、飴色の艶と深みがどんどん増していく。隣接したポケットのコバは最初から磨きがかかっていて光沢を放つ。へり返しと切り目を融合させたハイブリッドなコバを持つシステム手帳はとても稀少な存在といえるでしょう。

中面の右はノックス独特の「天地アオリポケット」。出し入れしやすく、段差がないのでスムーズな筆記をサポートします。注目したいのは、このアオリポケットの端の「念」の部分。念とは革パーツの縁に入れる飾りの溝のこと。アオリポケットの形は絶妙な緩い曲線でカットしてありますが（一見すると直線に見えてしまうくらい）、この端のカットラインに沿うように繊細な念が入っています。同じような念は、ペンホルダーの挿入口やジッパーポケットの仕切りパーツなどにもあります。フラクトの細部を眺めるほどに、職人の作り込みの凄さが伝わってきます。

日々使い込むごとに、素材が熟成し彩りに深みが増していく。そして手にするたびに細部の美に酔うことができる。フラクトは、日常生活の中で非日常的な悦びを与えてくれる極上のシステム手帳です。

※画像の一部に、バイブルサイズのフラクトが含まれています。