素材、作り、機能に徹したクラシックモダンなミニ6

一見すると古風、いや古くさい雰囲気がぷんぷんする「シンブライドル ミニ6」が今回のお題目です。素材と機能に徹し、装飾を一切なくしている手帳なので、ある人が見ればごく普通の手帳にしか見えません。でも、このモデルの奥には語りきれないほどの魅力が詰まっています。

2年くらい前の手帳イベントの会場でのこと。会場となっていた文具店には最新のM5のシステム手帳がたくさん並んでいました。マイクを握り「システム手帳の世界にはこれからミニ6の時流がやってくる」と声を上げたら、会場からは「えーっ!? なに言ってんの」なんて反応がすぐに返ってきました。この時は趣味文CLUBの空前絶後のサイズ「ミニ6ナロー」のオリジナルモデルの構想をひたすら考えている時で「ミニ6が秘めたパワー」を頭の中で再確認している時でした。こんな背景もあったのですが、単なる思いつきの発言ではありませんでした。

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「ちょうど良い」ことを表す言葉が日本語にはたくさんあります。「手頃」「ほど良い」「良い加減」などですが、システム手帳の中でミニ6はまさしく「手頃でほど良い絶妙なサイズ感」であることが特長です。1990年代に登場したミニ6は、働く女性がまず注目し(バッグの中にすんなり入れて持ち運べる)、その後ファーストフードチェーンのノベルティとなったり、女子高生がプリクラを交換する時に活用する「プリ帳」になっりと、世間的にも大きなトレンドを周期的に巻き起こしてきたサイズです。そして2020年代のはじめの時期に、再びミニ6のトレンドがやってくるのでは、と感じていました。

手帳の本来の意味は「いつも手もとにおいて、心覚えのためにさまざまの事柄を記入する小型の帳面」。どんな辞書にも、だいたいこんな説明書きがあります。和英辞典で調べると「(pocket)notebook」とあります。つまり「いつも携帯でき、身近に配置しておける小さなノート」のこと。

元々手帳が担っていた役割の多くがPCやスマホに移行しました。それでも、手書きによる書き留めのスピード感や、見返す時の素早さ、確実性、記憶をしっかり補佐する役割などの優位性は時代が進んでも不変です。すぐに取り出せるコンパクトさと、メモ以上の多くの情報を記入できる面積がミニ6の絶妙の良さ。

このミニ6の魅力を体感できる、シンプルで魅力的なモデルを作ろうと思ったのが「シンブライドル ミニ6」の構想の始まりです。デジタル文化が全盛の昨今ですが、その一方でアナログ回帰の強い流れもある。「古くさいことが新しく、かっこいい」という勢いをアナログツールの象徴でもあるシステム手帳にぜひ取り入れたい。コンセプトは「クラシックモダン」です。

ミニ6というサイズが誕生してから約40年が過ぎていますが、システム手帳100年の歴史をふり返ると、まだまだ後発といえるサイズです。でも、まるで戦前から存在しているような落ち着いた佇まいのミニ6が作れないだろうか。雰囲気とか手触りは五感にびんびん響き、ミニ6ならでは手のひらサイズで、開きは良く、収納はシンプルながら機能的……。こんな要素をスケッチしたメモをGANZOに持ち込みました。GANZOはシェルコードバンやブライドルレザーなど本格的な革素材の良さを巧みに生かして多くの名品を作り上げています。そして日本伝統の革職人の技を100年以上にわたって継承し続ける伝統が宿るブランドでもあります。

その後、GANZOのデザイナーの方から設計図が送られてきました。素材、作り、機能などすべてが自分が思い描いていた「クラシックモダン」なものでした。素材は、ド定番のブライドルレザーとミネルバボックスを組み合わせた「シンブライドル」。ブライドルレザーは英国「J&E セジュイック社」のもので、ミネルバボックスはイタリア「バダラッシィ・カルロ社」が手がけています。どちらも、古典的かつ伝統的な製法で鞣しを行っています。使い込むほどに味が出る素材です。

ブライドルレザーの歴史は古く、14世紀頃に英国の騎手や貴族が使う馬具の素材として作られました。たっぷりとロウ引き加工をしていますが、これは雨が多い英国の気候や馬の汗・唾液で革の耐性が弱くなるのを防ぐため。馬具としての硬さや強度を保ちながらも、表面のオイル処理の効用で独特の柔らかさもある。手触りはカチッとしているのに、握ると独特のしなやかさを感じることができるのもブライドルレザーの特長です。自分はこの手帳を開くたびに、クラシックモダンな感触を手と指からびんびんと感じています。

ブライドルレザーは経年変化がよくわかる素材です。ワックスやオイルを多く含んでいるので、毎日使っているだけでそれらが革に馴染んで艶が増し、風合いがにじみ出てきます。たっぷり含んだ内側のワックスが革の表面に染み出した「ブルーム」と呼ばれる白い粉がブライドルレザーの特徴でもあります。上写真のように新品の状態でも個体によってはカバー全体がブルームで真っ白なんてこともあります。

ブライドルレザーを知らない方がブルームを目にすると「きったねぇな」なんて感じるかもしれません。でもレザー好きな方の中には「ブルームが浮いて見えるのがブライドルレザーの真髄なんですっ」と言いながら、ブルームをそのままの状態にして巾着袋に入れて大切に使っている方もいらっしゃいます。一般的にブルームは柔らかい布やブラシで乾拭きをすることで、カバー全体の表面に艶が加わっていきますが、毎日手にして普通に使っているだけも手間をかけずに艶が増していくのがブライドルレザーの特長でもあります。

ブライドルレザーを使ったミニ6の特長はクラシカルな佇まいだけではありません。シンブライドル ミニ6は手帳に必要とされる小型さをぎりぎりまで追求しています。横幅は約89mm、高さは約140mm。リング径は11mmで一般的なリフィルだと70~90枚くらいを綴じることができます。とくに横幅はぎりぎりを攻めたサイズなので、リフィルを入れると雰囲気はまるで革装丁の洋古書のような佇まいに。

高さの140mmは一般的に普及しているペンの長さとほぼ同じです。ペンホルダーリフィルなどを装着してペンを沿わせると、ちょうど良いバランスでペンを携帯できる最適なサイズなのです。システム手帳に装着した愛用のペンがどれだけ“映える”かも、システム手帳選びの重要な基準。クラシカルな佇まいの手帳と相まって、愛用のペンを引き立ててくれます。

趣味文CLUB独自のサイズであるミニ6ナローのユーザーの方にもぜひ注目していただきたい。ミニ6ナローのリフィルを綴じ、M5のペンホルダーを装着するとペンがすっぽりカバーされる状態になります。沿わせたペンがはみ出すことなく、端正なミニ6のフォルムを生かしたまま使うことができます。裏ワザ的な活用法ですが、ミニ6ナローのリフィルをお持ちの方はぜひ試してみてください。

GANZOの物づくりは独特です。全体を眺めるとざっくりとしとラフな雰囲気がありながらも、細部の作りはとても細かく、美がいたるところに潜んでいます。緻密なステッチ、塗って削る作業を何度も繰り返して艶を出しているコバ仕上げなど、細部に宿る美が集まることで強い存在感を主張しています。このアンバランスな魅力もGANZOデザインの真髄ではないかと思っています。

カバーは直角に端正に曲げた角背の仕様で、開くと180度に平らに開きます。二つ折りのお財布などでは貼り合わせた2枚の革が折り曲がる部分に「つり」と呼ばれる構造を作り、開閉をスムーズにする仕組みになっていることが多い。この場合、外と内の革の寸法を変えているので、開いた時に折り曲げる部分にふくらみが出ることになります。シンブライドル ミニ6では外と内の革はまったく同じサイズにして巧妙に貼り合わせています。これによって180度開いても背が盛り上がらず、見開きをフルフラットにして書き込むことができるのです。「つり」を作らずにスムーズに180度開く作りはGANZOの職人の高い技術によって実現しています。

真っ平らに開くことで、内側のポケットの出し入れも円滑にできます。カバー裏の左側には、大型のポケットとカードポケットを配置。クレジットカードやレシートなどをここで確実に保管することができます。

右側には大型のあおりポケットを配置。頻繁に出し入れするメモ用紙などを入れるのに重宝します。自分はダイゴーの薄型メモ帳「ハンディピック」を挿しています。スモールサイズの70W×130Hmmはまさにジャストフィット。主に月間予定やチェックリストを使い、これを開きながら、システムリフィルに書き込んだりしています。小型ながらもこんな使い方ができるのもミニ6の良いところですね。

地味ながらも便利な裏表紙のポケットにも注目してください。すでにお使いの方はこのポケットの内側を観察してみてください。GANZOならではの丁寧かつ美しい作り込みを感じることができるはずです。このポケットの内径はちょうどミニ6のリフィルと同じ。つまりリフィルをすっぽり入れることができます。手帳を開かなくてもこのポケットに入れたリフィルを引き出すだけで記入や閲覧ができる。自分は出張などの時に、乗り換え駅や時刻などをメモしたリフィルと新幹線のチケットをこのポケットに入れて持ち歩いています。

端正かつシンプルながらも、ミニ6のシステム手帳の魅力を盛り沢山に持ち合わせたシンブライドル ミニ6にぜひ注目してみてください。

趣味の文具箱・趣味文CLUB 統括プロデューサー/清水茂樹

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