伝統のデニム素材に徹底してこだわった経年変化が楽しめるファッショナブルなM5
手帳という道具の純粋な役割は「忘れることを防ぐ」こと。ヒトの記憶は丸1日が過ぎたら3/4は無くなっているそうです。この忘却の中に消してはいけない記憶が必ずあります。これを確実に紙に残してくれるのが手帳です。
残すべき記憶(記録)ができたら、いつでもどこでも取り出して瞬時に書き留める必要がある。だから手帳はサイズが大きすぎないことが鉄則。勝手な想像ですが、手帳の語源は「手のひらに収まる帳面」だと思っています。手書きで記録を大切に残したい私たち筆欲の民にとって、手帳は1日に何回も取り出し、開いて、見て、書いて、役立てる道具です。良い革を使っている手帳は、使い込んでいくほどに革が手になじみ、艶が出たり、細かいキズが風合いに変化して秀逸な熟成具合を見せてくれます。だからこそ使用頻度が多い手帳にこそ上質な素材や丈夫な作りを求めたい。
では、本革以外で魅力的に熟成するシステム手帳は作れないだろうか。そんな妄想をしている真っ最中に「趣味の文具箱」編集部のお隣にある月刊誌「ライトニング」編集部からデニムでM5を作ってみたいとの熱い声が上がりました。ライトニングはアメカジを中心としたファッション&ライフスタイル誌。デニム関連の企画だけでまるごと1冊の雑誌を刊行するなど、ファッションアイテムの深掘りを続けています。
そして、材料の選定やデザインなど試行錯誤を繰り返して完成したのが「セルビッジデニム M5」です。従来のシステム手帳ではデニム素材を使ったものやジーンズ風のデザインのものなどがありました。今回ライトニングが選んだ素材は伝統ある「セルビッジデニム」です。
「セルビッジ(selvedge)」とは、本来は布地の糸のほつれを防ぐために付ける端の処理を意味する言葉。セルビッジデニムには、通称「耳」と呼ばれるほつれ止めが端にあり、これがセルビッジデニムの証であり、象徴となっています。1960年代まで主流だったデニム生地で、約80センチ幅の生地を50メートル織るのに1日をかけて丁寧に製造されています。旧来の織機を使うので効率は悪く、コストもかかってしまう。けれど、目の詰まったコシのある生地に仕上がり、堅牢性も高い。そしてゆっくりと織ることで生地には絶妙なムラ感が出てきて、経年変化することでセルビッジ独特の風合いを醸し出していきます。
今回のモデルで使っているセルビッジデニムは、日本の岡山県産。世界中のデニム愛好家が絶賛する伝統の製法が残っているエリアです。この上質な素材を使って製造を手がけるのはシステム手帳のトレンドを牽引するブランドであるアシュフォードが行っています。内側のあおりポケットには姫路産のタンニン鞣しのヌメ革を採用。ここには、「Lightning」と「ASHFORD」の2つのロゴを型押ししています。この革も使い込むと経年変化して、輝くような艶が出てきます。
システム手帳パラダイスの住人たちからは「趣味文サイズ」などと呼ばれる、リフィルに対して最小となるようなコンパクトなサイズを目指していますが、今回のモデルではインデックスなどが装着できる若干の余裕を持たせていることも特徴です。
日々活用して、革とは違うセルビッジデニムの斬新な経年変化をぜひお楽しみください。
(趣味の文具箱/趣味文CLUB統括プロデューサー 清水茂樹)